あひるの仔に天使の羽根を
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煌も寝付き、桜ちゃんも寝付いた。


だけどあたしも一緒に寝付くわけにはいかない。


さて、どうしていよう。


そう思った時、煌の脇机に乗せてある洗面器の水が少なくなっていることに気づいた。


高熱も高熱の煌の汗を拭き取ったり、タオルを濡らしたりしていたから、きっと水が蒸発してしまったに違いない。


そうだ、煌が目覚めた時用の飲み水も必要だ。


用意されている水差しの水は温くて。


きっと煌も桜ちゃんも、冷水の方がいいに違いない。


冷蔵庫も見当たらないし。


お嬢様なら、喉が乾いたらチリリンとベルでも鳴らせば、使用人が持ってくるのだろうか。


あたしは、水を調達することにした。


すると言っても、大したことではない。


「……すみませ~ん」


誰かに持ってきて貰うか、場所の在処を聞くだけで。


「誰かいませんか~?」


だが応答はなく。


式典というものに、この棟の使用人も全員駆り出されているのだろうか。


それとも此処の場所には使用人がいないのだろうか。


荏原さんの名を呼んだが、彼も現れない。


使用人がこんなのでいいのだろうか。


それともあたし達は来客とすら扱われていないんだろうか。


部屋を歩き回ったあたしが見つけられたのはトイレや洗面台も完備されたシャワー室。


洗面器の水は張ることは出来たけれど、飲み水として使用することは何となく躊躇して、仕方が無く水差し片手に人を求めて表に出た。


きっと誰か彼かは居るだろう、と。



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