あひるの仔に天使の羽根を
 

気づいた時には。


「………ッはぁ……ん、そこ…」


何とも悩ましい女の声。


視界にちらちら上下に動く、艶めかしい女の白い背中。


それは決してマッサージの類ではない。


そんなオチは用意されていなかった。


やばい。


あたしにはまだ早すぎる、大人の世界。


逃げだそうとしたあたしの耳に、


「ここまでね」


空気を奮わすような、艶やかなバスバリトンの声音。


男は喘ぐ女を残して、地面に落ちていた白いブラウスを羽織った。


「そんな……」


泣きそうに、不服そうに、甘えるように、異議を申し立てて男に縋る女に、



「また、明日ね」



にこやかな口調で拒絶の言葉を吐いた。


女は渋々と服を着始めて――



服を――



修道服を――




修道服!!?



だが――


色が違う。



憎っくきあの女のものではなく。



紫。


暗紫色だった。



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