あひるの仔に天使の羽根を
そしてその肉体は。
豊満な胸をわざと強調するような胸元は大きく開けられて、銀色のショールを背負い、太腿まで裂けた大胆なスリットの入った、紺色の扇情的なドレス。
男の招待客は、肉感的な美貌を誇示する各務家当主――各務樒を"雄"の顔で見て、女の招待客は圧倒的なその存在感の前に色を無くした。
歳は須臾の年齢を思えば、30代半ばくらいなのだろうが、20代と言っても通用する若々しさ。
そして樒は、それに俺が混ざっていないのが不服なのか、僅かに怒りの籠もったような眼差しを向けてくる。
「本当は、御階堂の新たな当主を招待していたはずだったのに、運がいいことねえ、紫堂の次期当主。ここには新参の…得体の知れない烏合の衆の…お仲間などいないから、お1人では心細いことでしょう?」
おいおい、人前でそこまで言うか?
煌が居たら、間違いなく斬りかかっているぞ。
しかもこの女――。
紫堂が異能力を持つ集団の総称だということを知っている。
これは、元老院と関係のある者達しか知り得ない、極秘情報。
判っているということは、元老院の何らかの手が加わっていると言うことで。
「ご心配戴き、恐縮です。わざわざ下賤の紫堂を入港を許可されるということは、"あの方々"のお力はこの地でも有効ということですね?」
「……!!!」
柳眉が不快そうに動く。
"あの方々"――元老院……恐らくは氷皇の力でも借りて、紅皇たる緋狭さんは招待券を手に入れたのだろう。
もしかすると、脱落した御階堂家の代わりは決まっていたのかも知れない。
それをねじ伏せてまで、緋狭さんは俺達を此処に寄越したかったのか。
各務家が招待客を厳選していたのは意外だった。
玲には悪いが、こんな子供騙しの遊戯(ゲーム)の式典如きに、なぜ主催者が上客を選別する必要があるのか。