あひるの仔に天使の羽根を
「なんかさ~、B級SFチックコズミックホラーに出てきそうだね~」
由香ちゃんは平気なんだろうか。
彼女にかかれば、ジャンルの幅が大いに拡がる。
「でもまあ、『KANAN』も天使と悪魔が戦うスケールの大きいゲームだからね~。こうした訳判らないものが出てもおかしくないのかもね~。
だけど流石にこれは、コスプレとは違って、現実的に存在させると気味悪いものだね。
何だろう、これ。狙ってるのかな~?
それにさ、師匠。この赤い線、点滅してるね。LED……かな?」
「……。そうだね。それも装飾電光だけではなく、かなりの電力を内部に送り込んでいるみたいだ」
表面を手で触れた僕は、自ずと目を細めた。
電力を…電気の流れを体感できる。
もしかして、紫堂の力が使えるのだろうか。
使えるならば。
これだけの電力を用いれば、煌や桜を回復できる。
こっそり取り出した月長石。
微かに……青白い光を放っている気がする。
だが――
それだけだった。
これだけの電力があって、反応は極僅か。
電力をコードに変換できない。
この電力を解析できない。
この電力を操ることは出来ない。
この僕が。
そうか。
この地では紫堂の力を弾いているのではなく、この地に流れる電気の力が僕にとっては未知なる不可解なもので。
きっと僕が読めない、何か理由があるはずだ。
だとしたら。
この電気の中身を解読できれば。
僕はこの力を利用できるかもしれない。
ただ――
どうやって解析すればいいのか。
僕を補佐するメインコンピュータもないというのに。
技術者だけが此処に揃っていても・・・・・・。