あひるの仔に天使の羽根を
 

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この地のルールで、昼間は互いの領域に行き来出来ないはずだったが、この"境界格闘場(ホロスコロッシアム)"は境界沿いに位置しているという理由で、どちら側からも出入り自由らしい。


「まるで関門だねえ~」


由香ちゃんが笑った。


もっと荏原に聞きたいことはあったけれど、時間が差し迫っているというので、僕達は彼に別れを告げ、ひとまず"神格領域(ハリス)"側からの入り口に向かった。


僕達が赤い絨毯を踏むと、きんという電子音が響き、僕達の身体を赤外線が走査する。


「これで性別判定されたら、僕アウトだね」


しかし赤外線は、その為ではなかったらしく、


「武器の所在なし。お進み下さい」



女性のアナウンスが聞こえると同時に、多面体の一部が横にずれた。


「うっわ~、わくわくッ!!! 早く行こ、師匠ッ!!!」


由香ちゃんが鼻息荒くして、僕の腕を掴んで暗闇の廊下をずんずんと歩いて行く。


途中、真っ直ぐに進む道と上に行く道と2つに分かれた。


「ご来賓の方は、手を画面に翳した後、上のセンサーに目をあててください」


突然アナウンス音がして、小さなモニター画面の青白い照明がつく。


手のひら認証に、瞳孔認証か?


また、随分と厳重な。



「僕達は一般客だから、まっすぐ行くよ?」


すると今度は、突き当たりに2つのドア。


また僕達の気配を感知したのか、ドアの間にある小さな画面の照明が自動的についた。



「女性は左、それ以外は右にお進み下さい」


そのアナウンスに、僕から思わず笑いが零れる。



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