あひるの仔に天使の羽根を
「師匠。思い出し笑いはエロいよ?
どうせ、また神崎絡みだろ?」
芹霞絡みなら、何でエロいという表現になるんだよ。
まあ――
僕も男だ、否定はしないけれど。
「いや……ね。随分と男蔑視だと思ってさ。女以外は"それ以外"。まあ確かそうなんだけれど、ここまで煙たがれると、意図的なもの感じてさ」
「んー、まあそうだね。あの双子も"お兄ちゃん"と呼ばなかったし、各務家も蔑視の感あったね~。一体男がなんだというんだろ。それでいて荏原サンは執事だし、昨日の宴には、各務の粋のいい男性陣が突っ込んできたのにさ」
――こんな面汚しを次期当主に据えるつもりなのかッ!!?
「ねえ、由香ちゃん。昨日の放蕩息子の名、言ってた?」
「……ないね。飛び入りの"柾"さんは、須臾嬢の叔父貴みたいだし、最後に現れた冴えない男の子…弟クンの名前も判らないね」
――兄さん、僕と一緒にここからでよう、ね?
「紹介の壇上で名前を出さないなんて非常識だ。須臾だって名乗ったのにさ。そして誰もそれにフォローを入れてなかったよね。
ということは、あのお披露目は……少なくとも紫堂における"次期当主"のお披露目程の効力は持たない。
昨日のあれは、偽装(ダミー)のようなものか?」
「師匠、偽装って何さ? 大体、あんな遅くに、何を仕出かすつもりだったというのさ」
「……ん。だからこそだ。あの時間だからこそ、わざわざ紫堂の登場を待っての放蕩息子の紹介は、意味があった気がするんだ。現にあの後に船は爆破されたしね」
「……ん~」
「荏原も、屋敷の前で当然のように僕達を待ち構えていただろう?
それからさ、1つひっかかるんだ」