あひるの仔に天使の羽根を


気配を殺して、神父服の男の背後に回り、その延髄に強い手刀を入れた。


男は声も上げずに、床に崩れる。


僕は少年の方に振り向くと、彼を安心させるために微笑み、座り込んだ少年に手を差し伸べた。


ところが。



「来るな来るな来るなッッッ!!!」



助けたはずの僕までも拒まれて。


しかも――。


僕が倒した男の時よりも、激しい動揺を見せて。


恐怖に歯をがちがちと鳴らせて。


「大丈夫。敵じゃないよ?」


優しく声をかけても少年は震えるばかりで。



「ねえ、助けたのに酷いじゃないかッッッ!!!」


耐えきれなかったらしい。


由香ちゃんがぷうとむくれて少年を詰れば、



「ひいいいいいッッッ!!!」




少年は更に後退る。



「何だよ、何だよ。ボク達が何したというんだよッッッ!!!」


詰め寄る由香ちゃんに、少年は壁際に追い込まれもう言葉も出ないようだ。


僕は溜息をついて、由香ちゃんの肩を軽く叩いて、静かに頭を横に振る。



「きっと恐い目に遭わされていたんだ。だから……」



仕方がないと言おうとした僕の耳に届いたのは、





「食わないでくれッッッ!!!」





「は!?」




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