あひるの仔に天使の羽根を


入院中、芹霞が自分の守護石を持ってみたいと自ら選び、そして僕が贈ったあの石に似ているように思えたからなのかも知れない。


僕が贈ったあの石が、如何に金を纏った陽斗を…他の男を彷彿させるものだとしても、それでも僕の贈り物を芹霞が身に付けているという事実が、僕には大事なことで。


そのまま指輪にして、求婚しようかと思った程。


さすがにそれは性急すぎると諦めたけれど。


そう、今はまだ。


だけど何れかは――。


それは口に出せない、僕自身への誓い。



芹霞に紫堂のような…守護石を操る力はないにしても、芹霞が金緑石を選んだと言うことは、それは芹霞を護る力となる。


僕の想いと相乗効果になるだろう。


その石が、あの須臾という少女についているのは気に食わないけれど。


僕にとって芹霞は唯一無二の存在であるように、芹霞を護る守護石も唯一無二の僕の石であって欲しい。


そう願う僕は我儘なのだろうか。



いつか芹霞が。



櫂の血染め石(ブラッドストーン)ではなく。


煌が気に入ったという黒尖晶石(ブラックスピネル)でもなく。


僕が選んだ金緑石(アレキサンドライト)だけを身につけてくれたら。



そう願わずにいられない僕は、心まで女々しくなってしまったのだろうか。



本当に僕は芹霞にまいっていて。


本当に芹霞以外を見れなくなっていて。


本当に自制する心にも余裕がなくなって。



僕は――


僕だけを芹霞に選んで貰いたくて仕方が無い。


僕はどんどん偏狭な男になっていく――。


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