あひるの仔に天使の羽根を
溜息をついて嗤う僕の視界が、ふと見慣れぬ存在を認めた。
須臾の隣に座る、派手な女。
華やかさだけなら、緋狭さんだって負けてはいないけれど、彼女のように神聖さはまるでない、毒々しい色気ばかりを放つ女がいる。
誰だ、あれは。
その時、スポットライトがその女を照らし、そして女がマイクを持って立ち上がると、滔々と話し始めた。
開会の宣言と、来賓者への挨拶。
ああ、そうか。
あれが。
各務当主の、各務樒か。
女王の貫禄。
人の上に立つことが定められている側の人間だ。
ただ――
勘違いしている。
世界は自分のものだと。
たかだかこんな閉鎖的な世界に。
もう世は、血筋ばかりが主ではない。
実力だけがものを言う時代だ。
紫堂が、櫂が。
あんな女に飲み込まれるはずはない。
きっと、それを判ってはいないだろう。
そんな時、司会者の女の声が響いた。