あひるの仔に天使の羽根を



「!!!」



櫂は気づかない。


気づく余裕がまるでない。


あの女――

櫂を狙っているのかッッッ!!!


煌や桜だけではなく、櫂まで手にかけようとしているのか!!?


櫂をすぐに護らないと。



だけど――


僕を、芹霞は呼んでいて。



この距離なら、すぐ櫂の元に行ける。



櫂は何も気づいていない。



だけど芹霞が僕を――




――なあ、玲。



芹霞が好きなんだと語ってくれた櫂。


僕に8年前の真相を打ち明けてくれた櫂。


僕を信用してくれている櫂。


気狂いの血を引く僕を見捨てない櫂。




その櫂の想い人を横恋慕している邪な僕。


櫂の気持ちを判っていて、自分の想いを止められない僕。


どうしても芹霞が欲しいと諦めきれない僕。



そんな僕を赦してくれている櫂は。


櫂は僕にとって光の…太陽の存在で。


僕にとって、かけがえのない存在で。



「……くっそッッッ!!!

由香ちゃん、

両手組んだまま掌を天井に向けて万歳してッ!!!」



「へ!?」




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