あひるの仔に天使の羽根を
反射的に僕が望む足場を作った由香ちゃんの手に、
――ダンッッ!!!
地面を跳ねた僕は、今度は由香ちゃんの手を踏み台にして、二段ジャンプをする。
そして突然現れて驚く須臾を無視して、
僕は来賓客席の前段の手すりに手をかけ、反動でそれをひらりと飛び越え、
「櫂ッッ!!! 行けッッッ!!!」
ありったけの声と、
ありったけの想いで叫ぶ。
櫂は固い顔をして頷くと、僕とは逆に飛び降りた。
瞬時に入れ替わった対象物。
修道服を着た女が驚いた顔をしている。
周囲の奇異なる眼差しなんて気にならない。
僕は。
今の僕は。
芹霞の元に駆けつけれなかった絶望ばかりで。
だからこそ、心に余裕がなく。
僕が笑うと、女は青冷めた。
足が動かないようだ。
そして――
船で出したあの鏡を取り出し、僕に向けた。
紫堂の力を無効化させるものを。