あひるの仔に天使の羽根を
だけど。
その力が使えない今となれば、それはただのガラクタで。
「さあ、来いよ。
僕が相手じゃ不服か?
――双月牙で?
それとも体術で?
悪いけど、手加減出来ないから」
僕は――
「お前が双月牙に塗った毒薬。
毒薬があるなら勿論――
解毒剤もあるよね?」
僕は音無く1歩で間合いを詰め、
「――出せ」
とてつもなく低い――
女とは到底思えない声を発した。
お前の為に。
僕は芹霞の元に行けなかった。
お前が居なければ。
櫂は芹霞の元には行かなかった。
僕が――
行かせなかった。
もう――
2人にさせることはなかった。
僕の――
"僕"の心が、慟哭した。