あひるの仔に天使の羽根を
――ぎゃははははは。
あたしは陽斗を思い出す。
昔、陽斗もこんな目を向けてきたこともあった。
だけど。
それでもあたしは陽斗と盟友になれた。
怯むべきことじゃない。
「……へえ」
男は嘲るような嗤いを作り、そして紅紫色の瞳をすっと細くさせた。
その急激に温度を無くす瞳の色に。
「!!!」
変わっていく。
色が――
紅紫色の瞳の色が――
赤から青へ。
瑠璃の色へと。
それは拒絶の色。
無慈悲な冷たさ。
あたしは思い出す。
――あ~はっはっは。
「あんたもしかして、
昨日の傍迷惑な酔っ払い!!?」
その…場違いなまでな傍若無人な振る舞いに。
次期当主らしからぬその素行に。
そして――
一瞬見せた、冷めたような眼差しに。
あたしはあの時。
確かに親しみを感じていたんだ。
彼だ。
疎外感味わっていたあたしの…唯一の同志。
どうして一目で判らなかったのだろう。
遠目すぎて、記憶が不明瞭だったんだろうか。