あひるの仔に天使の羽根を
「…随分な言い様だね。
だけどま、否定はしないけど」
そしてまた笑い出す。
理由なんて判らないけれど。
昨日とは違う。
――否。
昨日の顔は違う。
この男は――
「あたしは神崎芹霞って言うの」
思わず名乗ってしまった。
興味を持ってしまった。
安易に――
1歩近づいてしまった。
迂闊に近寄れば、生すら奪い取られてしまうような、そんな破滅的な美しさを持つ男に。
思ってしまったから。
虚無。
空虚
瑠璃色に変わった不思議なその瞳の色に、
一切の光が見当たらないと。