あひるの仔に天使の羽根を



「……何、そんなにオレを見つめて。

試してみたいの、身体の相性」



男が、艶やかに微笑みながら耳元にそっと囁いた。


慣れた手つきで、あたしの頬に白い手を添える。


近づく瑠璃色の瞳。


あたしは、その瑠璃の瞳から目を逸らさない。



「それ――


本心じゃないんでしょう?」



口唇が触れ合うその直前。


あたしは反射的に体を離し、瑠璃の瞳を見据えたまま言う。


男は瞬間的に目を細めた。


「……判ったよ。ここでいいんだね?」


「え?」


そして――


「!!!」


あたしを押し倒した。


視点が変わる景色の中、薔薇の甘い芳香だけが、あたしを包み込む。


仰向けになったあたしに、男の体重がかけられる。



近づく瑠璃色。



動けない。



脳裏に浮かぶのは、憂いの含んだ切れ長の目。



同時に――



――僕を呼んでくれる?



玲くんの声が蘇る。



――櫂じゃなく、僕を呼んでくれる?



そうだ。あたしは玲くんと約束したんだ。



「……玲」


あたしは玲くんの名前を口にした。



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