あひるの仔に天使の羽根を


「ふうん?」



男は、その櫂の姿から何か悟ったらしい。




「ざまあないね、『気高き獅子』。

どんな奴かと思ったけれど、

全然大したことがない」



櫂は――


これ以上ないくらい、男を睥睨して。



男は――


これ以上ないくらい、櫂を嘲笑って。



だからあたしは――



「"大したことがない"なんて、それは主観であって真実じゃない」



櫂を庇うように、あたしは言った。



男が、櫂の何に対して言った言葉なのかは判らない。


だけど。


あたしには。


櫂は、偉大なる紫堂財閥の次期当主に相応しい器を持つ男で。


庶民とは相容れないくらい、本当に凄い存在なんだと思うから。



悠然と。


超然と。



そんな不敵な態度が似合うのは櫂だけだ。


だから。


櫂を崩す者がいるならば、あたしは黙っていない。



――芹霞ちゃああん。



見捨てない。



あたしは櫂を護るんだ。



いつだって。



あたしは変わらない。



それが運命。



それが永遠の絆。

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