あひるの仔に天使の羽根を

・錯綜 桜Side

 桜Side
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少し眠ってしまっていたのか。


腹部の連続的な痛みが、私の微睡(まどろ)みを切り裂いた。


頬の、どろりとした汗を手で拭いながら、脇机に用意されている鎮痛剤のカプセルを手に取り、口に放り込んだ。


多分。


肋骨の数本は折れて、その骨の破片が脾臓辺りに刺さっている。


いつの間にか身に付けられている固定具と薬のおかげで、騙し騙し私は動くことが出来る。


何度思い返しても忌々しい。


ここまで一方的に私がやられるなんて。


裂岩糸が顕現出来れば、私はあの男を倒せただろうか。


ズボンのポケットにある、私の黒曜石。


"無知の森(アグノイア)"において顕現出来ないと判った時点で、私はいつも傍に置いていた黒い人形から、黒曜石の目だけを抉り取った。


――ひでえ!! 愛着ないのかよ?


馬鹿蜜柑が驚いた声を出したけれど、私にとって役に立たないものは、情は湧かない。


その場で切り捨てられる。


だから『非情』なのだ。


過去幾多、私は共に闘ってきた者達でさえ、足手纏いになると確信したら切り捨ててきた。


そう、私にとって力が全てで。


私を従わせたいなら、私を凌駕する力を見せればいい。


至極簡単なことだ。
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