あひるの仔に天使の羽根を
そんな私を玲様が簡単に倒し、そしてその玲様を櫂様が倒した。
私は櫂様と拳を合わせずとも、存在感だけで圧倒され、類い希な力の大きさを推し量る。
そしてこの方に一生ついていくと決めた。
ただ例外は馬鹿蜜柑。
身体能力は高いものの、技量がそれに伴わず。
神と謳われる紅皇に師事しているのに、礼儀1つなっていない。
それでいながら、いつも櫂様と共に居て、誰にでも可愛がられる。
あんなに異質で奇怪な色を放っているというのに、誰もがそれを拒まず優しく受け止める。
煌が自分に劣等感を抱いているというのは、私だって知っている。
あんなに恵まれた体躯をしているくせに、女のようにうじうじいじいじ。
見ているだけで、全身が痒くなってくる程。
そのくせ、長く考えるのが出来ない性分で、開き直ればそのことばかりで一直線。
今まで何に対して思いあぐねていたのか、そんなことを顧みることすらしない。
芹霞さんへの気持ちがいい例だ。
今の不遜な態度から見れば、馬鹿さ加減に輪をかけ退化して状況判断すら危うかった2ヶ月前のあの時が、まるで嘘のよう。
そう、彼はいつも前ばかりしか見れない。
闘い方も特攻型で、生傷も絶えない。
それを補うのは、再生能力の高い肉体で。
単純馬鹿に相応しく、我が身を武器にして突っ込むタイプだ。
だが――
今回ばかりは分が悪かった。
未だかつて、煌が回復出来ない事態に陥ったことはなく。
先程目にしたあの腕の傷。
あれは――致命的。
放っておけば、時間の問題だった。
私は、馬鹿蜜柑を切り捨てることは出来なくて。
何とか回復させたくて。
遠坂由香に止められ、玲様にまで怒られてしまったけれど。