あひるの仔に天使の羽根を
私は煌の傷口を見た。
傷が――治癒していっている。
旭の薬と、芹霞さんの機転のおかげだ。
それと煌自身の、特殊な身体も幸いしたのか。
とりあえず、傷の進行はかろうじて止められたはずだが、身体に回っている…現在進行形の毒の具合は判らない。
煌の毒に対する耐久性と、その特異な身体力に期待するしかない。
「……りか…」
不意に煌から声が漏れた。
芹霞さんを呼んでいるのだろうか。
凄く苦しげで、思わず窺い見たその顔は――
「こんな花より……お前の方が綺麗だって」
腑抜けていた。
しかも、背筋に寒気が走る台詞。
何の――
「夢を見てんだ、てめえはッ!!!」
私は、自分も病人だということを忘れて、瀕死状態だった煌の頭を思い切り殴った。
「……くうッ」
反動で、腹部が猛烈に痛い。
まだ、薬が効いていないというのに。
ああ――
私も馬鹿が移ってしまった。