あひるの仔に天使の羽根を


「芹霞……手を離すなよ?」


懲りずに紡がれる――

鳥肌が立つ程の甘ったるい声。


こいつの頭はそればかりなのか?


花畑の中で芹霞さんと手でも繋いで歩いているのか?


想像して――むかついた。


更に。


手と手の絡みあいを彷彿すれば、櫂様と芹霞さんのあの時の姿を思い出して。


嫌に生々しく、嫌にリアルにそれが再現されて。


そして2ヶ月前。


この馬鹿が、芹霞さんにしでかしたことを思い出せば、怒りだけが煽られ。


何が、"手を離すなよ"、だ。



「手を繋ぐのがなんだ、てめえ。

先刻芹霞さんは、僕の頬に――…」



頬に――…。


私は途端に赤面して床にしゃがみ込んでしまった。


おかしな声を出してしまったかもしれない。


再び思い出した、柔らかい芹霞さんの唇の感触。


熱い、熱い私の頬。


早い、早い私の鼓動。


2ヶ月前も味わった、この浮揚感。


確か先刻、眠る前もこんな状態になり、必死に鎮めていたことを今更のように思い出して。



落ち着け、落ち着くんだ私!!



「……なあ、


芹霞が頬に何だよ…?」



その時――


頭上から、不機嫌な声がした。



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