あひるの仔に天使の羽根を
 


ベッドの上から私を見下ろす

けだるそうな褐色の瞳。



「よう、桜……。

――で、ほっぺが何だって?」



けだるそうなくせに、嫉妬心だけはぎらぎら目に浮かべて。


「何でもねえよッ!!!」


「……へえ。何でもねえのに、随分と顔が真っ赤だよなあ、お前。人には散々説教たれてるくせに、お前何ちゃっかり芹霞と……ッッ!!」


威嚇しようとしたのか、起き上がろうとした馬鹿蜜柑の身体は、途端に大きく不自然に揺れ、そのまま巨体はベッドに斜めに沈んだ。


「何だよこれ……。

身体が重すぎて、息が上がる……」


荒い呼吸。


まだ毒の影響は有効らしい。


やはり――

根本的治療は、毒を何とかしないと駄目なのか。



「……桜。

俺……芹霞に会いてえ」



ぼそりと、煌が言った。



「目茶苦茶会いてえ…」



「……」



「一目だけでもいいから会いてえ…」



「……」



「大声出せねえし、身体動かねえし、どうしよう?」



「……」



「……なあ、桜どうしよう?」



「……」



「なあ、桜……」




「しつこいんだよ、てめえはッ!!!

パシリにする気かよ!?」




蹴り飛ばしたい心を、何とか抑える。


私の腹部の為に。


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