あひるの仔に天使の羽根を
だから――
「……そうしたいのは山々だ」
私は不機嫌な顔丸出しで振り返る。
「だけどそうしたら――
芹霞さんが泣くだろ?」
その時の――
馬鹿蜜柑と言ったら。
「……泣く、かな。芹霞……泣いてくれるのかな、俺のために。
ああ、やべ。想像したらすげえ嬉しい、かも」
真っ赤な顔で喜悦に蕩けた顔をして。
仮にも櫂様の護衛役が、こんな腑抜けた間抜け面するなど。
ああ――
私が負傷さえしていなかったら。
このマゾ男、ボロ雑巾にしてやるのに。
「……芹霞さんを呼んでくる。今は櫂様も玲様も遠坂由香も居ない。だがな、2人にはさせない。いいか、そこの処はわきまえろよッッッ!!!」
私は言い捨てて出ていった。
「……やっぱりそんなに甘くねえか。ああ……くそっ。何でこんなに身体が動かねえんだよ、頭はすげえぐらぐらするし。また……告れねえのか…? 呪われているのかよ……?」
そんな馬鹿蜜柑のぼやきも聞かずに。