あひるの仔に天使の羽根を
 

だから――


「……そうしたいのは山々だ」


私は不機嫌な顔丸出しで振り返る。



「だけどそうしたら――

芹霞さんが泣くだろ?」



その時の――


馬鹿蜜柑と言ったら。



「……泣く、かな。芹霞……泣いてくれるのかな、俺のために。

ああ、やべ。想像したらすげえ嬉しい、かも」


真っ赤な顔で喜悦に蕩けた顔をして。


仮にも櫂様の護衛役が、こんな腑抜けた間抜け面するなど。


ああ――


私が負傷さえしていなかったら。


このマゾ男、ボロ雑巾にしてやるのに。


「……芹霞さんを呼んでくる。今は櫂様も玲様も遠坂由香も居ない。だがな、2人にはさせない。いいか、そこの処はわきまえろよッッッ!!!」


私は言い捨てて出ていった。


「……やっぱりそんなに甘くねえか。ああ……くそっ。何でこんなに身体が動かねえんだよ、頭はすげえぐらぐらするし。また……告れねえのか…? 呪われているのかよ……?」


そんな馬鹿蜜柑のぼやきも聞かずに。


< 371 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop