あひるの仔に天使の羽根を
 


「……どういうことだ?」



矛盾を感じた。


"神格領域(ハリス)"の地形に。


"中間領域(メリス)"は何処だ?


鏡の迷宮は何処だ?


私は正門から引き返し、今度は反対方向に歩く。


私の方向感覚がおかしいんだろうか。


私の記憶が間違っていたのだろうか。


重い身体では、何故かその曖昧さに不安を煽られる。


各務家の裏側に回れば――


一面平原が続いていた。


行けども行けども、代わり映えしない草原ばかりで。


平面の檻の中にいる気がしてくる。


何だ――この広さは。



これが本当に、個人の……私有地なんだろうか。



そんな時だ。



「――まッッ」


「?」


「葉山――ッ!!!」


泣き叫ぶような、遠坂由香の声が聞こえたのは。


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