あひるの仔に天使の羽根を
おかしい。
玲様が。
あの玲様が、たかが20人程度の敵を蹴散らせないなんて。
紫堂の名誉の為に事を荒立てないようにして?
違う気がした。
芹霞さんではなく櫂様の守護を決めて、だからこそ怒りに満ちて"えげつない"状態になった玲様とて、紫堂の御曹司を……その仲間を手に掛けた犯人を捕まえたのだから、自分の正当性を主張出来るはずだ。
仮に"男性"が暴露したのがこの地における罪だとしても、情状酌量の余地はある。
紫堂の御曹司を護る為だと、絶対的権力を持つ各務の当主にでも訴えればいい。
玲様の機転なら、何とでも出来る。
どうとでも切り抜けられる。
その玲様があえて掴まったというのなら、
「……玲様は、何かを感じたんだ」
私は呟いた。
「感じた?」
「ええ。その黄色い……神父服の彼らに違和感を」
「まあ、式典直前で少年虐待は見たけれどね」
「虐待?」
「うん。おかしなBOYがいてさ、黄色い奴らが引き摺ってたのを師匠が助けたんだけれど、そしたら助けた側のボク達を"食うな"って叫ぶんだ」
「食う?」
「そ。おかしいだろ? ボクや師匠が落選ばかりしていた、2週間ゲーム先行体験権持った子だったみたいなんだれど、"嘘だった"って言うし」