あひるの仔に天使の羽根を
「嘘?」
「そう。どんな嘘かは判らないけれど、背中におっきな悪魔の名前の烙印つけてさ、相当なデビル偏執狂かなって思ったよ、ボク」
悪魔の名前の烙印?
「嘘でも何でも式典は実際に開催してたし。まあ観客は"中間領域(メリス)"の女ばかりの盛り上がりで、あの熱狂ぶりを外部にお伝え出来ないのが残念だけれどね。マスコミが来てれば、リアル中継して貰えたのにさ」
「女だけ、なんですか?」
「そ。男は会場の入り口も違うし…そう言えば、会場に男いなかったんだから、あの入り口は違う場所に続いていたのかな、一体何処へ続いていたんだろう」
「……」
「師匠がキレちゃったから、実際試演を見る処の話じゃなくてさ。もうボクだけでは何も出来ないからひたすら此処へ走ってきて……だけど重症の葉山がここに居て吃驚だったけれど。身体は大丈夫なのかい?」
「薬が効いているので、大丈夫。それより、貴方は何処から此処へ?」
「何処からって、"神格領域(ハリス)"と"中間領域(メリス)"の狭間にある、奇っ怪な建物の式典会場……"境界闘技場(ホロスコロッシアム)"ってとこからひたすら真っ直ぐさ。鏡の迷宮並に」
真っ直ぐ?
正門の向こうは崖。
確かに彼女は、正門とは反対側から駆けてきた。
何故、"中間領域(メリス)"が門とは反対側にあるんだ?
私は旭から教えられ、煌に教えた"約束の地(カナン)"の3領域の配置を思い返す。
私達は、"混沌(カオス)"、"無知の森(アグノイア)"、そして"中間領域(メリス)"の真下の鏡の迷宮を抜けて、正門から"神格領域(ハリス)"の各務家に入ったはずだ。
正門は、"中間領域(メリス)"に向いているわけではないのか?