あひるの仔に天使の羽根を


「本当に真っ直ぐ?」


「え……ん、決して曲がることなくひたすら真っ直ぐ。すぐには行き着かなかったけどね、あの嘘つき野郎め」


遠坂由香の舌打ちに、私は目を細める。


「い、いやね、道が判らないから聞いたのさ。"神格領域(ハリス)"への道を。そしてら真っ直ぐ行けば簡単に行き着くと言われたんだけれど、まさかこんなに走る道程だったとはさ。ボクは引き籠り内向型なのにさ、プンプン」


引き籠り…内向型であるかどうかは怪しいが、そう信じているらしい彼女は、ぷうと頬を膨らませている。


「はッ!!! それより師匠だって!!!」


そうだ。


「櫂様は、こちらへ来られているんですよね?」


「そのはずだけど」


櫂様の指示を仰いだ方が良いか。


それよりまず芹霞さんを――。



その時――だった。



「……。ねね、葉山。ボクさ……紫堂の声が聞こえたんだけど」


「同感です」


「……しかも何だか泣きそうな声だったんだけど」


「……」


「まさかね。まさかあの自信たっぷり向う処敵なしの紫堂が、ぎゃあぎゃあ泣くはずないもんな」



「……確かに」



「それでも、何だか死にそうな声に聞こえるのは何だろうね、幻聴?」


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