あひるの仔に天使の羽根を
俺はいつでも芹霞の隣に居る。
芹霞だけが俺の隣に立つ絶対的権利を持つのだと。
その関係は揺るぎないものだと。
理解させるため、安心させるため、毎日芹霞に会いに行った。
会いに行けない時は、煌に俺のマンションに連れてきて貰った。
いつでも会えるようにと、だから俺は紫堂本家を出たんだ。
玲と桜が一緒にいたけれど。
あいつらだって俺の気持ちを知っている。
同居人は、俺の暴走の制御効果を発揮していた。
――芹霞がここに来たら、本当に嬉しそう。
――名残惜しそうだね。牙城では征服欲が更に煽られるのかな?
――お前の世界の中心は、芹霞だけだね。
玲に揶揄され続けていた昔。
まさか、芹霞の香りが漂う時間を、玲まで嬉しく思っているなどとは、微塵も思っていなかったけれど。
何年――かかったろう。
俺達の仲が永遠だと再認識させるのに。
根気と努力と時間をかけて。
俺だけの"特別"な立ち位置さえ確保出来たなら、恋情など後から俺が何とかすればいい。
少しずつ……芹霞のペースで、俺達の関係を変えていこうと、そして俺の望む永遠の恋人になりたいと、そう願い続けて今にまで至っていて。
――拒む? 考えすぎよ、櫂。
俺はもう、あんなに時間をかけて修正する余裕はないんだ。
もういい加減、限界なんだ。
なあ芹霞。
何で――俺を拒む?
――だって君さ、オレに組み敷かれた時、呼んだよね?
――"玲"ってさ
何で俺の名前すら呼ぼうとしない?
気のせいじゃないだろう。
お前は――俺を切り離そうとしている。
そして――
誰を今度は内に入れる?
――玲と約束したんだもん……。
やり場のない怒り。
行き場のない俺の想い。
俺との約束は――?
無効か?
誰が――
誰が認めた、そんなこと。
勝手すぎるぞ、芹霞!!