あひるの仔に天使の羽根を


――ねえ、せり。


"特別性"の枠から、俺は追い出された。


恐ろしい美貌を持つあの男。


宴のあの様はただの偽装。


人間なんて、中身を意識的に変えるだけで周囲に与える外貌の印象は劇的に変わること、俺がよく知っているから。


各務久遠。


俺は――知っている。



あの男――


宴の時に芹霞を見ていた。


縛られたように、芹霞だけを見ていて


そして芹霞も見ていた。



妙に――心が騒いだ昨夜。



そして



――――…たくせに。




芹霞は気づいていなかったけれど、


確かに。



"忘れたくせに"



そう、言った。



芹霞を拒む様子のくせに、


俺には明らかに見せる敵対心。


俺のことを異名しか知らないくせに。


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