あひるの仔に天使の羽根を

「どうだ、吃驚したろ、神崎。ふふん。素材をおいしく料理したのはボクさ。だからあんなに重い荷物だったんだ。中々にグッジョブだろ、葉山」


初めて見た――"男の子"の桜ちゃん。


細っ!! 足長っ!!


何この……人形みたいな楚々なる綺麗さはッ!!


「ボクが目をつけていたのは葉山だけじゃないのさッ!!! 無論、如月じゃないよ。あれはコス泣かせだから、無視だよ無視ッ!!! それより……」


「櫂ッ!! 奇襲かけられて、警護団の奴らはほぼ即死だ。何かおかしい、僕の結界が破られているッ!!」


そう現れたのは――


確かに玲くんの声を持った、


――すらりとした美女。



腰まである栗色の髪を風に靡かせた、鳶色の瞳を持つ端麗な顔。


ふわふわとした白いシフォンスカートを風に靡かせた、


どこから見ても――謎めいた…背の高い美女で。


女のあたしもくらくらするくらいの、幻惑的な美女で。


少し儚げな、物憂い顔に、漂う色気が何とも……。


「れ、玲くん……なんだよね?」



見上げた櫂でさえ――少し呆けているようだ。


その隙を狙い、また殺気が飛んできた。


放たれた双月牙。


迷うことなく向けられた先は、


――あたし!!?



「芹霞!!」


煌が偃月刀で弾くと同時に、


櫂の緑色の風に、玲くんの紫色の電磁波が交じり合うようにしてうねり、闇に塗れた形の見えぬ刺客に向かって伸びていく。


異能力軍団、紫堂の血を濃く引く2人の攻撃は――


銀色に光った何かに反射されたように、大きく横にそれて海に落ちた。



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