あひるの仔に天使の羽根を
 


親父との約束がなんだ。


俺が大事なのは約束ではなく、芹霞だから。


言葉で伝えるということは、俺にとっての最終手段。


全てに打ち勝つ無敵な切り札。


全てが叶う最強な持ち札。



今まで芹霞が手に入らなかったのは、


言葉にしてなかったからだと。



そう――


軽視しすぎていたんだ。



言葉にさえすれば、絶対的に芹霞は俺のものになる。



……どんな根拠でもって?



それを一切考えることはしてこなかった。


俺の不遇さを、俺の弱さを全て言葉のせいにしていた。


逃げ道……だった。



――昔から本当にだあい好き。



どんなにしても。


どんなに言葉で伝えても。


どんなに"男"の言葉にしても。



芹霞は


8年前に還っていくばかりで。


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