あひるの仔に天使の羽根を
 

近いのに。



こんなに近くに居るのに。



芹霞が遠すぎて。



叫んでも叫んでも、


芹霞が掠れていくばかりで。




最終手段を封じられた俺は


行き場を失った。



態度で示して拒まれて。


言葉で言っても伝わらない。




これ――



決定的、なのか。





芹霞を諦めろという




天啓、か?




俺では芹霞が手に入らないと




そう――


いうことなのか?




そして――



狂愛する女が他の男の手に渡るのを



ただじっと



耐えていろとでもいうのか?



12年間分の想いを


8年間の努力を



"ご愁傷様"



そんな言葉で片付けられてしまうのか?



俺は――


あくまで芹霞の思い出の一部で



あくまで群れの中の1匹で



時間と共に過ぎ去ってしまうような…



そんな存在だと?

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