あひるの仔に天使の羽根を


「"何を絶望する?"」



俺の前に見えるのは、黒い瞳。


その瞳は、緋色の輪郭を象っていく。


芹霞と同じ黒い瞳が、またしても俺を縛る。



「"芹霞は確かに生きているというのに"」



ああ――



「"真実とは、人を解して初めて得られるもの。

だとしたら、坊。

お前は芹霞の全てを理解できているのか?"」



緋狭さん。



「"その結果が、『真実』に至ったのか?"」



貴女はまた――



「"完璧主義を放棄するにはまだ早い。

お前は未だ、堕ちることを恐がっている。

お前はまだ、何も判ってはおらぬ。

芹霞のことも、坊自身のことも"」



俺を見捨てないんですね。



「"芹霞に坊の全てを判らせろ。

出来ないのではなく、しろ。

その自信がないのなら

――とっとと芹霞を諦めろ。

うざったいだけだ"」



俺は――



「"お前には、やるべき課題がまだまだある"」



崩れるわけには行かない。


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