あひるの仔に天使の羽根を
 


「"こんなことくらいで心折れるようなら

本当の試練にお前は耐え切れぬ。

間違いなく――お前は潰れる"」



「え?」


思わず俺は聞き返してしまった。


「……姉御から託された"紫堂を蘇生する呪文"だよ。意味は判らない」


遠坂は苦笑していた。


「見事なもんだね、姉御の威力は。

伊達にあの氷皇を尻に敷いてないよ……」


そうぼやいてから、俺に向き直る。


「失恋かどうかは紫堂次第。

今はそんなもので、師匠を見捨てて貰いたくない。

師匠は、紫堂の為に犠牲になったんだから」



玲が、何だって?


「――捕まった。あの得体の知れない神父服の男達に」



どくん、と心臓が嫌な音をたてる。


「如月の解毒剤はボクが持っている。

師匠が、あの船で襲った女から分捕った奴はね」


そういうと、緑色の液体が揺れる小瓶を取り出した。



「……櫂様」



桜がすっと歩み出た。



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