あひるの仔に天使の羽根を
 

「玲様はお考えになられる処があったのだと思います。

ですが。

如何にお強い玲様とて、おかしな宗教団体の全貌が明らかではないこの状況では、絶対的に大丈夫だと言い切ることが出来ません。

櫂様、桜に行かせて下さい」


「しかし桜、お前だって身体……」


「桜はもう大丈夫です。

煌も目覚めましたし」


「目覚めた?

あの傷でか?」


俺は目を細める。


「はい。芹霞さんが、旭の軟膏を煌につけた処、傷の進行は何とか。しかし毒の症状がまだ身体に回り、動けない状態です」


軟膏――


俺の背中に玲がつけたというあれか。


「何故そんなものが……」


「私がこっそり忍ばせていたのを、芹霞さんが見つけて下さり」


確かに、俺の背中は完全治癒した。


成分は何だか判らないが、普通のものではない。


回復速度が尋常ではない。


俺は遠坂から手渡された小瓶を握る。


――櫂ッ!! 行けッッ!!


あの時俺は。


何故玲があの来賓席に現れ、何故そう叫んだのかを理解しようとせず。


ただ一目散に芹霞の元に駆けてきた。


玲は。


――約束したんだもん……。


芹霞の異変に気づいていて玲は。



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