あひるの仔に天使の羽根を
「ひとまず、煌の元に戻る。話はそれからだ」
俺は、まだやらねばならないことがある。
――本当の試練にお前は耐え切れぬ。
俺の腕の中に居る、くったりとした芹霞。
温かい――
それがあるなら、俺は"絶望"などとは感じてはならない。
如何に俺の心が傷ついていても、
芹霞が生きているのだから。
――芹霞ちゃあああん。
8年前の悲劇ほどではないだろう?
――芹霞あああああ!!
2ヶ月前の悲劇ほどではないだろう?
俺は俺自身にそう言い聞かせ、
芹霞を抱える両腕に力を入れた。
全て――
俺の力量が試されている。
縹渺とした心に、過酷な試練が架せられている。
その輪郭はまだ見えないけれど。
――せり。
俺は。
その始まりを感じた。