あひるの仔に天使の羽根を
途端、大きくぐらつく船体。
「!!!」
コツン、コツン。
靴音と共に銀の光が大きくなってくる。
曖昧な敵の姿が明確になってくる。
コツン、コツン。
皆が臨戦態勢に入り、緊張状態にいるのが判る。
コツン、コツン。
長い金髪、金色の瞳。
あたしの中の、"彼"が大きく動揺した。
似ている。
陽斗に似ている。
でも陽斗には家族はいなかったはずで。
真っ白な女性ものの修道服。胸にはロザリオ。
手にしているのは、掌に収まるサイズの丸い手鏡。
何かの模様がついた、年代物の青銅製の縁に覆われている。
コツン、コツン。
銀色に光ったあれは、この……鏡の光だったとでもいうのか。
こんな小さな鏡に、櫂と玲くんの力は弾かれたというのか。
コツン……。
足を止めた女は、冷たい金の瞳を櫂に向けて言った。
「――その程度か」
抑揚のない、無情なその声の響きに背筋が凍りつく。
――り。
そして金の瞳は、あたしを見つめ、侮蔑しているように鼻で笑った。
「誓約も――所詮…その程度のものか」
――せり。
どくん。
心臓が跳ね上がった。