あひるの仔に天使の羽根を


判る。



陽斗からの警告だ。



思い出しちゃ駄目だ。



……何を?



――ねえ、せり。



これは病院から付き纏う幽霊の声で。




「警告する」



女はそう言うと、真っ直ぐにあたしを見た。


吸い込まれそうな金色の瞳で。



「カナンに……近づくな。


近づけば、殺す


神の名の元に――」



そして女は――海に飛び込んだ。


櫂が抉るようにして、風の力を向けたけれど反応はなく。


途端――あたしの体から力が抜けた。



「芹霞、おい大丈夫か!? お前顔真っ青だぞ!?」



煌の声が遠くに聞こえる。



――せり。



警告、警告、警告、警告!!



脳裏に赤色が瞬き始める。



胸の中で陽斗が、どんどんとあたしに訴える。


考えるな、と。



――せり。




あたしは誰にも"せり"なんて呼ばせたことはない。


曖昧な輪郭。


あたしは何も見えない。


あたしは目を瞑り、両手で耳を塞ぎ、蹲った。


そうせざるを得なかった。


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