あひるの仔に天使の羽根を
 

しかし。


清楚な顔してるのに、やることが悪女だ。


無意識か?


故意的か?


おうおう、そんなに身体ぐいぐい押し付けて。


色仕掛けか?


その時。


隣から微かな震動が伝わってきた。


芹霞だ。


芹霞がその様子を睨み付けるように見つめて、正座した膝の上に置いた両手拳がぶるぶると震えていた。


凄え。


芹霞が本気で怒っている。


相手が俺なら、絶対あの拳でぶん殴られている。


それに櫂は気づいていないようで。


「………」



お前――


妬いているのか?



櫂は逃げだそうとしてんだぞ?

あんな嫌がっているんだぞ?


お前、あれをどう捉えているんだよ?


今、何を考えているんだよ?



俺の――

見間違いであって欲しい。


芹霞が"女"の目で櫂達を見ているなんて、俺の考えすぎであって欲しい。


決定的にしないで欲しい。


ただの――

幼なじみとしての独占欲だよな?



俺の心臓が嫌な音をたてる。


ぎゅうと締め付けられる。


それは予兆のように。


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