あひるの仔に天使の羽根を


「嬉しい。あんな"美しい"紫堂様が手に入るなんて」


櫂をモノ扱いした上に、"手に入る"発言にむっとしたけれど、それより引っかかるのは。


"美しい"



確かに櫂は綺麗だ。


そこいらの芸能人やモデルなど及びではない程の美貌。


しかも最近は妙な色気まである。


櫂の美貌は神々しい程で。


それはあたしだって認めている。


だけど須臾の口調はまるで……


「まさか、櫂の"美しさ"だけに惚れたんじゃないでしょうね?」


しかし。


「惚れた、だなんて!! そういうの、禁じられているんです、私。私はただ、美しいものが好きだから…」


何が違うっていうの。


だけどやはり、須臾は櫂の上辺だけを好きなんじゃないだろうか。


櫂は。


美貌はさることながら、紫堂財閥を背負うに値する中身まで完璧な男。


例え外貌がどうであっても、それを差し引いてもおつりがくる程のいい男で。


そう思いながら、あたしは考える。


あたしは。


8年前の櫂の可愛い部分を、具体的に挙げることは出来るけれど、

今の櫂のいい部分を、具体的に挙げたことがあっただろうか。


あたしもまた、櫂を形容する時は、その外貌だけを言ってなかったろうか。

< 426 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop