あひるの仔に天使の羽根を
「嬉しい。あんな"美しい"紫堂様が手に入るなんて」
櫂をモノ扱いした上に、"手に入る"発言にむっとしたけれど、それより引っかかるのは。
"美しい"
確かに櫂は綺麗だ。
そこいらの芸能人やモデルなど及びではない程の美貌。
しかも最近は妙な色気まである。
櫂の美貌は神々しい程で。
それはあたしだって認めている。
だけど須臾の口調はまるで……
「まさか、櫂の"美しさ"だけに惚れたんじゃないでしょうね?」
しかし。
「惚れた、だなんて!! そういうの、禁じられているんです、私。私はただ、美しいものが好きだから…」
何が違うっていうの。
だけどやはり、須臾は櫂の上辺だけを好きなんじゃないだろうか。
櫂は。
美貌はさることながら、紫堂財閥を背負うに値する中身まで完璧な男。
例え外貌がどうであっても、それを差し引いてもおつりがくる程のいい男で。
そう思いながら、あたしは考える。
あたしは。
8年前の櫂の可愛い部分を、具体的に挙げることは出来るけれど、
今の櫂のいい部分を、具体的に挙げたことがあっただろうか。
あたしもまた、櫂を形容する時は、その外貌だけを言ってなかったろうか。