あひるの仔に天使の羽根を
 

そう思えば、あたしもまた、須臾と同じ地平に立っているその他諸々の女の1人にしか過ぎず、そのあたしが、櫂の美貌を賞賛している須臾にどうこう言える立場にはない。


あたしは、櫂の何処を見ていたのだろう。


櫂が凄いことは判る。


煌が憧れるのも判る。


不敵で超然としていて。


誰もが畏怖する辣腕の御曹司。


だけどそれは櫂の全てではなく。


じゃあ、櫂ってどんな男?


あたしだけが知り得る、本当の櫂ってどんな男?


あたし自身、今の櫂と相対してきたろうか。


あたしは、"永遠"を唱える割には、櫂との間に壁を作っていたんじゃないか。


線を引いていたんじゃ無かろうか。


何で?


あたしは庶民だから?



何だか――

もやもやとする。
 


「ふふふ、そこが兄様のお部屋です」


気づけば各務本家にあたしは居て。


「ありがとう、芹霞さん」


何もしていないあたしの手を両手で握ったのは、"清楚"な須臾で。


あたしは、御礼を言われることは何1つしていない。


あたしは、櫂をあげるなんてひと言も言っていない。


それなのに。


どうして手に入ったと断言出来るの?


――薄倖の美少女、か。


胸が苦しい。


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