あひるの仔に天使の羽根を
「ねえ――。
そんなに"玲"を助けたいの?」
瑠璃色の瞳が、あたしに真っ直ぐに向けられた。
あたしは真剣な顔をしてこっくりと頷いた。
「じゃあ――…れる?」
それは本当に小さい声で。
本当に切なそうな顔であたしに言うから。
まるで懇願のように思えてしまって。
「ごめん、もう1度」
出来るだけあたしも真摯にその条件を呑もうと身を乗り出したけど、
「修道服手に入れたら、もうオレに構わないでくれる?」
向けられたのは拒絶の言葉で。
そして焦れたような瞳の色は――紅紫色。
何だろう、本当にこの瞳の色は。
そう思いながらも。
破滅的な笑みを浮かべるこの男は、
何か寂しげに思えて仕方が無かった。
「ねえ、どうしてあたしを嫌うの?
あたしはあんたの敵じゃないのに」
あたしは、紅紫色の瞳を真っ直ぐに見据えた。
久遠は自嘲気にふっと笑う。
「オレには味方はいないよ」
それは消えていきそうな儚い笑みで。