あひるの仔に天使の羽根を
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「どうして君は此処にいるのッ!!」





苛立った声も、慣れれば微笑ましく思うから不思議だ。


修道服に着替え、それなりに足を手当したあたしは考えた。


"中間領域(メリス)"って何処?


しかし建物をうろつく給仕は口は開かず、荏原さんも留守らしい。


櫂達の元に帰れば判るだろうけれど、須臾と櫂の組み合わせを見るのは嫌だった。


それに。


多分、あたし1人で行かせてくれない。


由香ちゃんは同行すると言っていたけれど、由香ちゃんまで危険な目に合せたくない。


だから各務本家から直接1人で行こうと思ったけれど、道筋が判らない。


また迷ってしまうのは、時間の無駄だから。


だから尋ねているのに、誰も目を泳がせて答えてくれない。


だから仕方が無く――


また久遠の部屋に戻った。


あのベッドの部屋には彼はいなかったから、最後に消えた隣のドアを問答無用で開けた。


ノックしても絶対入れてくれないのは判っているから。


すると久遠は、またもや女性とお楽しみ中だったみたいで。


何度も濡れ場らしきものに居合わせるタイミングの悪さを呪いながらも、アダルトな世界を許容して平然としていられるあたしは、結構順応力が高い女なのかも知れない。


ソファの上にいる久遠を跨がるようにして、修道服を乱して声を上げて上下に動く女性。


「いあ…いあ…ぶ……ぐら……いあ…」


それは人間というより犬の甲高い吠え声にも似て。

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