あひるの仔に天使の羽根を
「オレじゃなくて、他の奴に聞けばいいだろう!!! ここには使用人がいるんだから!!!」
「教えてくれないんだもん」
「爺に聞けばいいだろう!!?」
「爺?」
「荏原、ここの執事だ!!!」
荏原さんのこと、"爺"って呼んでるんだ。
何だか可愛い。
久遠もやっぱり坊ちゃんなんだ。
「……なんだその顔」
不機嫌そうな顔に、あたしは笑って誤魔化した。
「荏原さんもいないし、他は教えてくれないし」
「…いない?」
「そ。式典の会場に行ってるのかね?」
「爺は……」
そして何かを考え込むようにして、苦々しい笑いを見せた。
「成程ね」
意味の判らないあたしはきょとんとして久遠を見ていたが、その視線に気づいた久遠の顔から、またしても笑みが消える。
「須臾にでも聞け」
「やだ。聞くならあんたがいい」
「………」
「方向指差すだけでもいいから。お願い、ね?」
上目遣いで頼み込むと、久遠は溜息をついて片手で顔を覆う。
「オレには、そういうの効かないから」
「は?」
「……考えなしか」
何だか久遠は意味不明。