あひるの仔に天使の羽根を
判らぬほど腑抜けた当主でないこと願いながら、その顔を見れば。
「………」
嘲笑うかのような、酷薄さに満ちたもので。
悪魔。
その形容が一番相応しい、そんな女が嬉々と僕を見下ろしていて。
異様に赤い舌をちらつかせ、緋色の下唇を舐めた。
何ともそれは悍しいばかりの表情で。
更には。
その隣に居る須臾までも、同じ顔をしていた。
清楚の欠片もない、櫂の元にいた時とはうって変わったその容貌に。
僕は、"やはり"と受容出来る奇妙な自分を感じた。
そして。
向けられる眼差しはそればかりではなく。
大した面識もない来賓者までもが、僕を見下すかのように侮蔑の視線を投げ寄越してきて。
蔑むような眼差しには慣れている僕だけれど、さすがにこの状況でのこれは腑に落ちず。
僕は――
著しい疑念を抱く。
何か違う。
何かがおかしい。
僕の本能がそう告げた。
そして。
「"断罪の執行人"の裁きを待とう」
神父服の男の言葉に、僕は桜を思い出す。
――桜、誰にやられた!!?
――いの……しっこう…。
あれは、"断罪の執行人"と言っていたんじゃないだろうか。
僕には怒りがふつふつと湧いてきて。
僕は桜の仇を討ちたくて、もしそいつに行き着くことが出来るのならと、あえて抵抗するのをやめた。
だから僕は由香ちゃんに解毒剤を託した。