あひるの仔に天使の羽根を
 

段々と…歩く足に異様な重さを感じてきた。


まるで鉛のように思える僕の足。


耳鳴りが襲って、些か頭がくらくらする。


閉鎖的環境にいるせいなのだろうか。


一種の酸欠状態で、軽い貧血でも起こっているのだろうか。


身体の負荷が大きすぎるのか、僕の心臓は乱れ始めている。


まるで2ヶ月前の呪詛のように、ずっしりと何かが僕にかかっているような。


あの呪詛は、忘れたくても忘れられない。


僕が初めて芹霞と外出して、そして芹霞を護りきれなかった不甲斐ない僕の記憶だから。


僕ならば芹霞を護れると自惚れていたが故の苦い思い出。


僕は発作を起こし、他の男の手に芹霞を渡した。


そして今も尚、芹霞を護ることが出来なくて。


こんな場所に連行されている。


櫂は芹霞の元に辿り着けただろうか。


護り切れたのだろうか。


その役目は僕がしたかった。


今頃、2人は何をしているのだろう。


2人きりでどうしているのだろう。


きりきりと胸が痛んで仕方が無い。


櫂を拒んでくれ、芹霞。


そう思う僕は浅ましく。


嫉妬と欲望に塗れた僕は真の咎人で。



――泣けてくる。




< 447 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop