あひるの仔に天使の羽根を


想いを告げれたら。


未だ、僕が想いを告げていないのは理由がある。

勿論、櫂の想い人だからという躊躇いもある。


だけどそれ以上に――


櫂のように、言えない事情があって言わないのと違う。


煌のように照れて言えないのとも違う。


僕は――惧れているんだ。



もし芹霞に拒まれてしまえば。


今度こそ確実に気狂いの血が騒ぎ出す。


そうしたら全てを喪失するだろう。


…僕の、尽きぬ異常性が判るからこそ。



現に今だって。



いっそ力尽くで。


泣いて喚いても組み敷いて、

芹霞を僕のものにしたく思っている。


僕の痕跡を身体に刻みつけて、

僕なしでは生きていけないようにしてやりたいと思っている。


もう他には余所見させないように

その目を抉ってやりたい心地さえしてしている。


僕の元から逃げようならば、

その両手両足を切り刻んでも繋ぎ止めたいと思っている。


いつまでも何処までも共に。

少しのずれも赦さない。


どんな非道な手段を使っても、必ず同調させる。


そんな僕の想いに一種の陶酔すら覚えながら。


何て残酷で恐ろしい"僕"。


断罪すべきは僕で。


だからこそ、身代わりで煌や桜を負傷させた、その相手が許せなかったのかも知れない。


僕こそが、その責めを負うべき者だから。


僕は――

裁きを求めているのかも知れない。


穢れきった心に、制裁を求めているのかも知れない。


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