あひるの仔に天使の羽根を
 


玲様と馬鹿蜜柑の、無言の責める空気は。


私はただ、罰ゲームに男装をさせられただけで。


反対する私の意思など却下されたわけで。


そんなに――私の格好は違和感があるのか。


鏡がないから、確認すら出来ない。



ああ――。


櫂様がいなくてよかった。



私は、馬鹿蜜柑の時のように、主に敵意を向けられたくはない。


そして玲様は。



玲様だと思っていたその存在は。



ああ――、


何て言う美女。



遠坂由香は手を叩いて喜び、馬鹿蜜柑は風塵となる寸前で。


私は、どんな顔をしていたのだろうか。


元々麗しい顔つきの玲様だから、性別がどうであれ、美しいのは変わりがなかったようで。


透けるような白い肌が、嫌に艶かしく。


さらにそこに遠坂由香が化粧で色味をつければ。


見ている私達は、その美しさに溜息しかつけられない。



そんな時――それは起こった。



「!!!」




複数の殺気。



私達は瞬間的に、戦闘態勢に入る。


馬鹿蜜柑はピアスの太陽石を偃月刀に顕現させ、玲様は握りしめた手に電磁波を纏った。


私は床に置いていたテディペアの両目の黒曜石を裂岩糸に顕現し、


各々船内に散る殺意の源を気配で探る。


「――僕の結界が、破られている」


やがて玲様が、長い栗毛色の鬘を靡かせながら舌打ちをした。


「これだけの人数がいて、侵入が判らないなんてありえない……。


更に、僕の結界を破るなんて」


確かに――そうだ。


「おい。味方の気配がしねえぞ?」


険しい顔つきで煌が呟いた。



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