あひるの仔に天使の羽根を
看守らしき黒い神父の男達は、あの下卑た男も入れて全部で5人。
僕の気配も感じることが出来ない素人ばかりで、僕の奇襲に難なく陥落する。
というより、あれだけ派手に叩き付けたのに、物音に気づかないなんてありえない。
どこまで素人だ?
聴覚がおかしいんだろうか。
そう思い、気絶した男の耳に目を向ければ……ない。
両側における耳という器官が、彼らには付いていなかった。
盛り上がった肉の具合から見るに、無くなったのは明らかに後天的で。
恐らくは――切り取られたのだ。
幾ら囚人が、泣き叫んで此処から出せと懇願したとしても、相手が聞こえていないのなら、恐怖心は確かに煽られるだろう。
うってつけの黒い看守。
僕の係だけが耳がついていたことは運が良かった。
ふと――思う。
神父服の色の違いは階級制でもあるのだろうか。
多分この"黒"は最下層だ。
思えば――彼らの容貌は何処か歪つで醜悪なものを持っている。
この地で男の生き残る道が神父であるならば、醜悪さ故に"黒"で、地下に潜められているのか。
僕を連れた"黄"は、衛兵のようなものだとしたら、船で僕らを襲った"暗紫色"…"紫"は何なのか。
もし神父と修道女が同じ階級を持つとしたら、煌を襲ったあの白い修道服女は、どんな位置づけなのか。
僕は、一番僕に近い背格好の男から神父服を奪い取り、身に付けた。
臭いとズボンの丈の短さは我慢しないといけないか。
静まり返った牢獄。
ふと、目の前の鉄格子を見てみれば、全身裸で、腐ったような匂い放つ、白く濁った体液の中で気絶している若い囚人の男も居て。
此処で何が行われていたかは、考えないでおこう。
とにかくこの場所から脱することにした。