あひるの仔に天使の羽根を


「ごめんなさい。あたし馬鹿な新入りだから、単語の意味がまだ上手く結びついていないの。ああ何だ、そういうことだったのか。ようやく理解出来たわ。もっともっと色々勉強しなくちゃねえ」


かなり苦しいけれど、ここは強引でもやり過ごさないといけない。


「お姉さんまさか――」


――どくん。


「いや…そうは見えないし。だとしたら……蛇に堕落させられたとか?」


蛇?


「あの蛇の魔力に屈しちゃってる?」


魔力?


判るように説明してえ!!


あたしの頭は試験直前時のようなパニックで。


「大丈夫。あたしは強いもの」


多少目を泳がせながら、あたしは話をあわせて虚勢を張る。


すると少年はほっとしたような顔をして、警戒心を解いた笑顔を見せた。


「何かさ、昨夜招かれざる不審者がこの地に侵入したみたいで、その警戒で皆ぴりぴりしていて」


あの宴の時の爆発のことだろうか。


「お姉さんがそいつかと思って、僕焦っちゃった」


焦っていた、だろうか。


思い切り威嚇していた気がする。


「だけどお姉さんには戦意はなさそうだし、しかも蛇の誘惑どうこう以前に、本当に馬鹿そうだもんね。爆破して乗り込む知恵も度胸もなさそうだし。んん、勉強頑張ってね?」



けらけらけら。



一発――


「………」


殴ってやりたい!!!



あたしは、そんな怒りを必死で堪えた。



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