あひるの仔に天使の羽根を
 

「ねえ、お姉さん。僕、送ってあげるよ」


にっこり。


金色の瞳を細めて、少年は笑った。


「何だかお姉さん、このままだと野垂れ死にしそうだもん」


縁起でもないけれど、はっと我に返ればあたしは確かに道が判らなくて。


「"生き神様"の処に戻るんでしょ? 大変だよね、"聖痕(スティグマ)の巫子"の儀式の為に、皆で"生き神様"の精気を洗滌して、力を養わないといけないなんてさ」


本当に、意味が判りません。


聞きたくてむずむずするけれど、聞けばまたあの…殺気めいた威嚇に脅される。


仕方が無くあたしは笑って誤魔化した。


玲くんの元に行かなければ。


"処刑"も"アイガン"も冗談じゃない。


そして何より。


玲くんを連れ去ったのが黄色い神父服の男だというのなら。


そんな彼らを後方に黙らせて控えさせるだけの力を持つ、こんな小さい正体不明の少年には、金輪際関わらない方がいい気がする。


それは警鐘のような直感で。


「よし、じゃあ"生き神様"の処へ……」


意気揚々と、まるでスキップでもしそうな雰囲気で言った少年に、あたしはおどおどと声をかけた。


「あ、あの…あたし、まず教会に行くんで、折角だけど此処で」


すると金の瞳は不思議そうな瞬きを浮かべた。


「え? 何で教会なんかに?」


修道女は教会には行かないものなのか。


「え、ええと……頼まれ事を引き受けて」


苦し紛れの言い訳。


「"聖痕(スティグマ)の巫子"の?」


だから、その意味分かんないんだって。


とりあえず頷いてみた。



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